こんなところでも近畿タクシー

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以下の文章は「フジサンケイ ビジネスアイ 2006年8月21日」の記事を転載しています。

“移動制約”アイデアで解決
近畿タクシー



流し営業している「ユニバーサルデザインタクシー」。
ホームヘルパーの資格を持つ乗務員が、高齢者や障害者に対応する
(神戸市長田区の近畿タクシー本社)
 日頃、誰もが“足”として利用するタクシー。しかし、果たして本当に“誰もが”なんだろうか…。そんな思いから、次々とユニバーサルなサービスのアイデアを実行しているタクシー会社がある。

 神戸市長田区に本社を置く近畿タクシー。「タクシーというサービスは、考えたらマン・ツー・マン、ドア・ツー・ドア。いつでも、どこでも、誰でも、です。こんなユニバーサルな輸送手段はありません」。森崎清登社長は初めて「UD(ユニバーサルデザイン)」という言葉に出合ったとき、改めてそう思ったという。
 「“移動制約を解決する視点”が、タクシーサービスの原点だと気づきました」。その“制約”を取り除くため、1つ1つ実行に移していった。
 ワンボックスタイプの「ユニバーサルデザインタクシー」を導入したのは5年ほど前。5人乗りで、座席がゆったりしており、後部ドアから車椅子のまま乗れる。
 べつに珍しい車ではないが、この車を通常のタクシーと同じように、流し営業しているのが特徴だ。「車椅子のお客さんへの対応は、何か特別のサービスのように考えていましたが、そうではないんです。当然のサービスなんです」。
 現在、「福祉タクシー」と合わせ、3台のユニバーサル対応車を走らせている。
 同社が保有するタクシーは52台。乗務員は70人。決して大きなタクシー会社ではないが、サービスへの姿勢は徹底したものがある。
 「タクシーのサービスは、突き詰めれば人(乗務員)のサービスです」と森崎社長は強調する。現在、ホームヘルパー2級の資格をもつ乗務員が10人、患者搬送の資格を持つ乗務員が2人おり、社をあげて資格取得を奨励し、そのための教育にも熱心に取り組んでいる。
 昨年2月には乗務員の制服を一新した。オシャレで疲れにくく、介護もしやすい制服をと、地元のアパレル会社とデザインを練ったもので、乗務員のサービス意識の向上にも少なからぬ効果を発揮している。
 ユニークなサービスを紹介すると−。
 3年前に始めたのが、子供だけで乗れる『安心かえる号』。日本で初めての試みだった。幼稚園や保育園、塾などの送り迎えをするもので、延べ200人近くが登録している。
 書類を届けたい、荷物を忘れたなど、あっ!と思ったときに利用するのが、モノだけを運ぶ『あっとサービス』。夜間にユニバーサル車を配車するのが『星空の車いすタクシー』。
 夏季限定の『海のタクシー』は、神戸・須磨海岸にあるホテルと提携。ユニバーサル対応車で高齢者や障害者を輸送し、ホテルに備えつけの「砂浜用車椅子」を使って、波打ち際まで案内するサービスだ。
 「このサービスはホテルと提携するからできるんです。何も全部自分でしようと思わなくてもいいんです」という。

 「いまやユニバーサル対応の設備や機器を備えているところは多い。すでにいっぱいあるんですよ。それをつなぎ合わせることが大切なんです。これが地域の中でのユニバーサルサービスのつくり方です」。
 森崎社長は神戸市がユニバーサルな街づくりに向けて2003年に立ち上げた「神戸UD広場」(こうべユニバーサルデザイン推進会議)の発起人の1人。日頃からいろいろな活動に参加しており、次々とアイデアを思いつく裏には、広い人脈と綿密な情報収集がある。
    (佐久間史信)


「ユニバーサル対応は人(乗務員)の問題」と、定期的に講習会を開くなど、
乗務員の教育に熱心に取り組んでいる

 新聞紙面よりスキャナで写真を取りこみましたので、若干汚れが目立ちますがご了承下さい。


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