以下の記事は「神戸新聞 平成12年9月25日 朝刊」のコラム「ふぇいす」に掲載されたものを転載しています。
まちづくりをお手伝い |
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話題の車両、発想の源は? |
タクシー会社社長 森崎清登さん(47) |
神戸・長田を拠点に、次々と新しいサービスを打ち出す「近畿タクシー」のアイデア社長。 もともとは酒造会社で営業、広報を担当。義父の事業を継ぐため15年前、同社に入った。 将来の規制緩和をにらみ、観光と福祉を営業の二本柱に育てる経営計画を練った。その一環として10年前に導入したのが、ロンドン・タクシーだった。レトロ調の車体や女性ドライバーの起用が話題を集め、観光客だけでなく、ブライダルにも人気だ。 「神戸の街並みにふさわしい車を走らせたかった。効果は予想以上でした」 生まれは須磨だが、幼いころ、長田の大正筋商店街などでよく遊んだ。その懐かしい下町は、震災で壊滅的な打撃を受けた。 タクシーの特性である「人を運ぶ」を切り口に、まちづくりに貢献したい、が原点。震災後、復興に汗を流す人々に、その思いは一層強まったという。 「高齢者に優しい商店街へ、タクシーは“動くパビリオン”でありたい」復興セール時の駅から商店街への無料送迎、高齢者や障害者を対象にした自宅送迎サービス…。アイデアを次々と実行に移した。 |
業界の現状は厳しい。来年10月には、運賃自由化など規制緩和も控える。 「今が勝負。マイカーではできないきめ細かなサービスで、一人一人の要望にこたえたい」 環境に優しい天然ガス福祉タクシーを全国に先駆けて導入。車いすに乗ったまま乗れるワゴン型の「ユニバーサルデザイン」タクシーも走らせる。ソフト面でも、ホームヘルパーの資格を持ったケア・ドライバーの育成に力を入れる。 バス事業も始めた。10月1日からは、新長田駅南地区で復興住宅と商店街、病院を結ぶ「買いもん楽ちんバス」として走る。 「商店街の人々の復興にかけるエネルギーは、私たちにも大きな力。地域でどんなサービスが求められているのか、住民と一緒に考えていきたい。アイデアの源は街にあります」 神戸市長田区在住。妻、子ども三人と暮らす。 (記事・長沼隆之、写真・立川洋一郎) |
※ 新聞紙面よりスキャナで写真を取りこみましたので、若干汚れが目立ちますがご了承下さい。