こんなところでも近畿タクシー

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以下の文章は「朝日新聞2003年2月11日朝刊・チャレンジャー発見」に掲載された記事を転載しています。

アイデア次々 業界に異彩

英国製車体、運賃メーターに工夫…乗って楽しい車を

   近畿タクシー社長
   森崎清登さん(50)
 52年、神戸市須磨区生まれ。75年に早稲田大卒業後、西宮酒造(現日本盛)に入社し、広報と商品開発を担当。86年、義父の山田治郎氏が創業した近畿タクシーに入社。「神戸の街並みに合う」と91年、英カーボディーズ社の黒塗りのロンドンタクシーを購入。96年社長に就任。運賃メーターのわきに3段階の目盛りをつけ、料金が上がるタイミングを客にわからせる方式を採用するなど、精力的に新サービスの導入を図っている。
  新サービス導入 精力的に

 利用客減で苦戦するタクシー業界の中で、次々に新サービスを打ち出し、異彩を放つ会社がある。神戸市長田区の近畿タクシーだ。同社の森崎清登社長(50)に、アイデアがどこからわいてくるのかを聞いた。(平畑玄洋)

 −−レトロ調のロンドンタクシーを導入した理由は。
 タクシーを単なる移動の手段ではなく、乗って楽しい車にすることで、当社のイメージアップを図りたかった。土日を中心に、結婚式を挙げる新郎新婦からの引き合いが多い。今後は、異国情緒豊かな旧居留地を周遊する観光タクシーとしても活用したい。
 −−運賃が上がるタイミングを知らせるメーターとか、客が好きなラジオ番組を自分で選べるように後部座席の前にラジオ本体を取り付けるといったアイデアは、どこから生まれたのですか。
 00年に街に走らせたいタクシーのアイデアをホームページで募り、集まった約3500通のメールを参考にした。当社が新型の料金メーターを取り付けた後、メーカーには全国のタクシー会社から約5千台の注文が入ったと聞いている。潜在的なニーズを掘り起こした結果だと思う。車内に手鏡を置くサービスも、元はメールのアイデア。ちょっとした工夫で、乗客に喜ばれることを知った。
 −−顧客のターゲットは。
 ネクタイを締めた社用族だけがお客さんではない。93年から車いすや移動ベッドのまま乗れるリフト付きタクシーを用意し、予約制で入退院者や高齢者の送迎サービスを始めた。00年からは、このリフト付きの車内が広いワンボックス車を流しで営業し、初乗り660円でだれでも乗車できるようにしている。
 −−社員には介護関係の資格を取った人もいるそうですが。
 お年寄りの外出の準備から、病院への付き添いなど、一環した介護サービスを提供するために、6人の社員にホームヘルパー2級を取らせた。また、民間救急を担うために、神戸市の上級市民救命士の資格を取った社員もいる。「老老介護」の家庭では、足腰の弱い親を病院に連れて行くために、急病でなくとも救急車を呼ぶことがある。救急車を緊急性の高い患者に振り向け、気兼ねなく移動してもらうためにも、民間救急の分野に積極的にかかわっていきたい。
 また、近く、ペット同伴でも安心して乗ってもらえるタクシーを運行しようと考えている。動物をきちんと扱えるように、社員2人がいま、愛玩動物飼養管理士の勉強をしている。
 −−新サービスで業績は伸びていますか。
 会社全体の売り上げは震災の後、下げ止まっていない。だが、私は新しいサービスが将来の需要を掘り起こすカギだと信じている。
 規制緩和の影響で、例えば今後、貨物輸送をしている運送会社がタクシー業界に参入してくるかもしれない。そうなればセダンではなく、大きな荷物に対応できるワンボックス車を投入してくるだろう。その際、対抗できるのがリフト付きタクシーだ。
 不況だからといって守りに入るのではなく、創業50年の蓄積をフルに生かして、積極的に新しいマーケットを開拓していきたい。

 新聞紙面よりスキャナで写真を取りこみましたので、若干汚れが目立ちますがご了承下さい。


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