こんなところでも近畿タクシー

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震災復興の過程で「企業」が「地域」に目を向け始め、「地域」との関係を改めて重視する姿勢を見ることができた事例を集め、被災者復興支援会議Vにより冊子が制作されました。今回その1つとして掲載された事例の中に弊社社長・森崎が紹介されています。
この冊子には全部で11の事例が掲載されています。(三ツ星ベルト(株)、(株)フェリシモ、日本トラストファンド(株)、但陽信用金庫、(株)神戸製鋼所、三菱重工業(株)神戸造船所、他)
なお、被災者復興支援会議Vは、座長・室崎益輝氏(神戸大学都市安全研究センター教授)、副座長・加藤恵正氏(神戸商科大学商経学部教授)をはじめ十数名のメンバーにより構成され、兵庫県阪神・淡路大震災復興本部総括部生活復興課内に設置されています。

以下の文章は冊子「復興まちづくりへの新たな視角“震災復興と企業文化”〜地域と企業の新たな関係構築を目指して〜」
(被災者復興支援会議V[兵庫県阪神淡路大震災復興本部総括部生活復興課内]発行・編集)に掲載されたものを転載しています。

ながた「ぼっかけカレー」からまちづくり

エム・シーシー食品(株)(神戸市東灘区)
異業種交流会での出会いがきっかけで商品化された「ぼっかけカレー」が新長田の新たな名物として地区の活性化に貢献している。
 従業員350人を擁するエム・シーシー食品(株)は、東京、名古屋、大阪、広島、福岡にも支店や営業所を開設している調理食品専業メーカーである。同社の創業地である長田区苅藻通(現在は同社神戸工場)は、くしくも先程紹介した三ツ星ベルト(株)の西隣にあたる。このことは何かの因縁なのだろうか。
 同社創業以来今日までの80年間、神戸市内に本社を構え、素材缶詰の時代にミートソース、ドライカレーなどの調理缶詰を、素材冷凍食品の時代にクリームコロッケなどの調理冷凍食品を商品化してきており、主に業務用マーケットを独自に築いてきた。最近では、業務用商品で培ったプロの技を取り込んだスパゲティソースやカレー、スープなどの家庭用商品を提供しており、2002年8月には、今や神戸・新長田の新しい名物と言っても過言ではない「ぼっかけカレー」や「ぼっかけカレーラーメン」を発売した。(※「ぼっかけ」とは、牛すじとコンニャクを甘辛く煮たもの)
 この「ぼっかけ」シリーズの誕生した経緯が、これからの地域と企業の関係を考える一つのヒントを提示していると言える。同社の商品企画部長と、長田TMOに出資している近畿タクシー(株)社長が異業種交流会で出会ったことから交流が深まり、近畿タクシー(株)社長から東灘区と長田区の商店街のつくったカレーのおいしさを競うテレビ番組の話を聞いた同社の商品企画部長は、「ぼっかけ」を使うことを思いつき、カレー対決の協力を快諾する。その背景には、同社の創業が長田区であること、また、部長が長田区生まれの長田区育ちであることと無関係ではあるまい。
 カレー対決への協力快諾の3日後に「ぼっかけカレー」の試作品を持ち込んだところ、長田TMO関係者はその早さに驚いたという。その後、長田TMO関係者の商店主らと50回程度もの協議を経て、試作品の改良を重ねていった。その間の協議の動きを新聞報道され、いつ販売するのかとの問い合わせが同社に殺到したことから商品化を決定した。現在は、長田区内の商店街やキオスクで販売しており売れ行きは好調で、開発を担当した社員は自分の仕事に誇りをもつようになったとのことである。
 異業種交流会での出会いが、地域に根付いた調理食品専用専業メーカーとTMOとの共同商品開発につながり、開発・発売した「ぼっかけカレー」が今や神戸・新長田の「新名物」とも言われるぐらいになるほど新長田地区の活性化に貢献した。また、共同商品開発を通じて、同社は長田TMOに出資したとのことであり、ますます地域との関係を深めている。
 このことは、被災地のみならず全国各地で、地域に根付いた企業と商店街やNPO、あるいはまちづくり協議会などとのコラボレーションによる地域の実情に応じた活性化は可能であることを示していると言えるのではないだろうか。ただし、我々が忘れてはならないのは、その地域への愛着や感謝の念などがないと、地域の活性化にまでつながらないということである。

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