こんなところでも近畿タクシー

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以下の文章は、PHPのビジネス誌「THE 21 ざ・にじゅういち No.236」( 平成16年7月1日発行)に掲載された記事を転載しています。

“関西発”元気企業
いまの強みを掘り起こし会社の信頼アップ

「儲けのタネ」は必ず、自分の会社のなかに眠っている!

お客の声を活かして激戦業界を勝ち抜く

 よく「関西人=ケチ」といわれるが、こと商売の世界においては、ケチであることは決してマイナスなことばかりではない。不景気といわれるいまだからこそ、お金をなるべくかけず、いまあるものを最大限活用することにより、お客の心をつかみ、売上げを上げることが求められているといえよう。ここでは、そうした関西の元気企業を紹介したい。
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タクシー業界では2002年2月の規制緩和以来、遠距離割引や深夜割増運賃の値下げ、IT技術を活用した新サービス導入などによる、激しい顧客囲い込み競争が繰り広げられている。はっきりいって、資本力に乏しい中小企業には厳しい戦いだ。だが、こうしたなか、近畿タクシー(株)(本社・兵庫県神戸市)はアイデアを凝らした小さな工夫を積み重ね、認可車両55台という中小規模ながら、独特かつ存在感あるタクシーとして、地域の支持を受けている。
 同社がとくに注目を集めはじめたのは、規制緩和の1年ほど前から。運賃が上がるタイミングを知らせる料金メーターを付ける、急な雨でも客が乗っていた自転車を固定して運べるラックを取り付ける、客席側にラジオのチューナーを装備してお客が自由にラジオ局を選局できるようにするなど、ちょっとした工夫を次々と採り入れて話題を呼んだ。
 こうした工夫も、大手ならばオリジナルな機器を開発するなど、大げさなことになってしまうところだが、近畿タクシーの場合は、すべて既製のものを採用。投資としては可愛いものだ。
 しかし、PR効果は抜群だった。というのも、これらのアイデアは、同社のホームページ上の「タクシー進化論会議」というコーナーに寄せられた、一般消費者からの「こんなサービスがあったらいいなあ」という要望を実現したものだからだ。消費者の意見を採り入れて実行するという、変化に対して前向きな姿勢が受けたのである。
 こうした工夫と並行して、「地域」「介護・福祉」「安心・安全」などをキーワードにして、乗務員にホームヘルパー2級の資格を取得させたり、会社としても警備業法に基づく警備会社の認可を受けた。これらを活かし、塾帰りの子供を安全に家まで送る「安心かえる号」などの新サービスを開始。
 また、場所取り・宴会道具の貸し出し付きの「お花見タクシー」、海水浴シーズンに須磨海岸までの送迎を行う「海のタクシー」といった、タクシーを利用した行楽企画なども打ち出した。こちらも投資額としては少ないもの。「基本的に当社は、いまあるものをどう使うのか、もともとあるものを組み合わせて何かできないか、というところで工夫してきました。ですから、自社の強みが何かを把握することが大切なんです」と森崎清登社長は話す。現在、同社には、地域を巡回・監視する警備ビジネスや、マンション管理会社と提携し、マンション生活者の地域生活全般をサポートするビジネスなど、従来のタクシー会社の枠に収まらない、いくつかの新ビジネスへの協力の話が持ちかけられている。
 小さな工夫を繰り出し続けているうちに、気づくと独自の活路を開いていた。近畿タクシーはそんな好事例かもしれない。
            (フリーランス・ライター:上保文則)
(↑1番上の写真)
近畿タクシー(株)のホームページと「タクシー進化論会議」http://www.osk.3web.ne.jp/~taxikobe/



(↑2番目の写真)
カエルのぬいぐるみ「キンタくん」を手にした森崎清登社長。
子供を安全に家まで送る「安心かえる号」のサービスでは、契約者の子供に小型「キンタくん」を渡して目印代わりにしている。
















 誌面よりスキャナで写真を取りこみましたので、若干汚れが目立ちますがご了承下さい。


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